抗生剤の適正使用について

5月11日 金曜日 晴れ

最近喉が痛い、咳が出る、熱が出るなどの症状の方が結構来られている。いわゆる風邪症状である。先日もこのようなやりとりがあった。

「先生、この程度でしたら抗生物質は出せませんか?」

それに対する私の答えは”出しません”だったのですが、そのままで診察を終えたならおそらくその方が誤解されたままとなるだろうなと思った。つまり、抗生物質が出せない(出さない)理由は、風邪の程度が軽かったからではなく、その原因が細菌ではなくウイルスだから・・・だったのである。決して程度の軽重で抗生物質の処方を決めているわけではないのですよ、ということを一応私なりの説明で行った。十分にご理解いただいたかどうかは分からないのだが、なるほどそういう理解をされている方は多いのだなと思うに至った次第である。抗生物質がウイルス感染には効果が全く期待できないということは、医師にとってはイロハのイ、まさに水は高いところから低いところに流れますよ・・というのと同じように常識的なことである。

今年から小児風邪症状で、ウイルス感染が疑われる場合に患者さんに説明を行った上で抗生物質の処方を控えた場合には、その説明料というような診療報酬の項目が設定された。巷間言われるように抗生剤の濫用が耐性菌(抗生物質が効かない細菌)の増加に繋がり、重症患者さんがその耐性菌によって命を奪われるということが問題視されているからであろう。ことほど左様に適正な抗生剤の使用が重要であることの証左であり、これはすなわち医療費の適正使用にも関連する事柄である。

そう、風邪(いわゆるウイルス感染症によるかぜ症候群)には抗生物質は百害あって一利なしなのである。

・・・・問題は、①ウイルス感染症か細菌感染症かという判断に苦慮する場合もままあるということ ②特に、喉が痛くて扁桃腺が腫れていて発熱があるという全く同じ症状でも、溶連菌、アデノウイルス、EBウイルス・・など原因となる病原微生物の異なる場合が存在するということ・・患者さんにとっては、前回抗生物質で即効だったから(溶連菌の場合)、今回も同じ薬が効くはず!(今回は実はアデノだった)、なのに医者は抗生剤の処方をしてくれなかった・・・なんてことが往々にしてあります。そんな場合に重要なのは・・十分な患者さんとのコミュニケーションっていうこととなります。最後は口で勝負なのでしょうかね、我々のおしごと。