9月11日 水曜日 晴れ 暑い

昨日は前勤務地でご一緒していた先生が久しぶりに丹後に来られたので、その御講演を聴いてきました。糖尿病に関する話題でしたが、これがまさに眼からウロコの内容だったのです。糖尿病とは、ご存知のように血糖値が高くなる病気なのですが、それが何故いけないのか?旨く説明できる方はあまりおられないのではないでしょうか。おしっこにアリがたかってくるから?いえいえ、そんな筈はありませんよね。血糖値の上昇は動脈の損傷をもたらし、色々な臓器障害を起こすからなのです。細小血管障害として知られる代表はいわゆる糖尿病性網膜症。腎臓や眼や神経がおかされるということは聞かれたことがあるかと思います。最近よくいわれているのは大血管障害、つまり心臓発作や脳卒中など、一度生ずるとたちまち生命に危険を及ぼす合併症の方ですね。さて、彼の講演内容に戻りますが、一枚目のスライドに私は唸ったわけです。「糖尿病を治療する際のゴールとは何か?」答えは何だと思われますか?血糖値を下げること?ブーッ。「血管障害、特に大血管への障害を最小限に抑えて、患者さんの生命予後を時間的、質的に健常者と同じ程度にすることである」ということなのです。もちろん、そんなことは自分としては理解していたつもりではありますが、やはりはっきりと言葉にして意識するということが大事だなあと思いました。すなわち、血糖値を下げるということは、その目標を達成するための手段に過ぎないわけです。もちろん、患者さんの年齢や背景にも考慮して、その治療の度合いを設定してあげなくてはいけません。当然40歳代の、あと30年以上健康に過ごしてもらわないといけない患者さんと、80歳代の患者さんではそのアプローチは違って当たり前なわけですね(あ、80歳代だからいい加減で良い、と言いたいのではありません)。ともすると日常診療では、ヘモグロビンA1cが0.5下がったとか上がったとかで一喜一憂しておわり・・・となりがちなわけですが、その終着点を常に頭の片隅に置きながら治療に当たらなくてはなりません。ちなみに最近の欧米での臨床試験では、血糖値の厳格コントロール群は必ずしもそうでない群に比べて、予後が改善していない(どころか悪いものもあったりする)というデータが出されています。だから血糖は下げなくても良い、というのは極論に過ぎますが、目的を誤って数値にばかりこだわってはいけないというメッセージに我々は素直に耳を傾けるべきだと感じました。いろんな場面でこの教訓は生かされます。木を見て森を見ず、鹿を追うものは山を見ず、小利大損・・。

詩集

新境地を開拓しようと挑戦中。寝落ち寸前ですが・・・