1月13日 月曜日(祝)

今日は成人の日です。ニュースを見ていると成人式って12日に行われる自治体が結構多いのですね。自分の成人式を思い出すと、ほとんど初めてのスーツに身を包み、なんとなく落ち着かない気持ちで旧友たちと会ったことを思い出します。あれからもう四半世紀以上経つのです….。

さて、外来ではインフルエンザが急速に増えています。幸い受験生の方で診察をした患者さんはおられませんが、この時期皆さん人ごみを避けて、くれぐれも体には気をつけて勉強がんばってください。インフルエンザ感染症は言うまでもなくウイルス感染症なのですが、ご承知のように今は、タミフルやリレンザ、イナビルといった抗インフルエンザ薬というおくすりがありまして、時と場合に応じてこういう薬剤を処方することになります。特に薬剤の効果の観点からいうと、発症後48時間以内の早期に服用を開始することで、症状の重症化を防ぐことができ、治癒までの期間が短縮されることがわかっています。抵抗力の弱い患者さんや、なんとか早期にお仕事に復帰しないといけない方にとっては、無視できない恩恵をもたらしてくれるのではないかと思います。ただしこのことは、タミフルを飲まなければ病気が治らないということを意味している訳ではありません。それほど症状が強くなければ、十分な栄養と休養を取りながら身体を休めておけば治る病気でもあります。それ以上に、やはり予防接種でなるべく免疫を付けておくということも重要でありましょう。タミフルはその半分以上が我が国で消費されているという統計については、色々な議論があると思いますが、保険制度の背景や国家財政など、加味するべき多くの因子があり、単純に善し悪しを結論づけるのは難しいように思います。まあいずれにしてもこの時期、手洗い・うがい・マスクなど衛生に気をつけて、自身で出来る防御を心がけることも重要かと思います。

influenza

 

風邪と言えば、診療の際に時々抗生物質をご所望の患者さんがおられます。抗生物質は細菌に対するお薬ですので、そのほとんどがウイルスを原因としている風邪には、基本的には無効です。一方、細菌の関連する風邪症状といえば、たとえば溶連菌(のどが腫れていたくなる)や副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)の一部など、ごく限られた場合になります。ただし、見逃してはならないのが小児の髄膜炎を合併している状態や、高齢者(だけとは限りませんが)の肺炎でしょう。これらの疾患はなるべく早期に発見して抗生物質を適切に投与することが重要となります。当院は小児科ではありませんので、髄膜炎の子どもさんを診察することはほとんどありませんが、ただの風邪かなと思っていた方が実は肺炎であったり、幾度かひやりとした経験があります。そういう症例を経験すると抗生物質処方の閾値が下がってしまいますが、やはり限られた時間の外来であっても、適切に処方が出来るよう(必要な方に適切なお薬を)心がけたいものです。ちなみに、いわゆる「かぜぐすり」と呼ばれているものも、ただ単に咳や発熱という症状を抑えるだけのものですから、風邪ウイルスそのものを治している訳ではありません。小生が、風邪症状を訴えてこられる患者さんの診察をしているときには、1)どのような症状を有しておられて、何が最も苦痛となっているのか? 2)ご年齢やご職業などを背景にして、どの程度の強度で症状を抑えてあげる必要があるのか? などということを考えながら、小さな脳味噌をクルクルと回転させて診察をしています。当然発熱や痛みを抑えるお薬を処方すると、病気は治っていなくとも気分はスッキリしますし(一時的ではありますが)、仕事やお勉強にも取り組むことが出来るのですが、それなりにお薬の副作用も考慮しておかなくてはなりません。総合感冒薬に含まれている消炎鎮痛剤には、身体のむくみや、発疹などのアレルギーを生ずることがありますし、同じく含まれている抗ヒスタミン剤では、特にご高齢の方などでは、おしっこが出にくくなったりすることもあります。そんなこんなことを説明しながらご希望に応じて診察をしていると・・・次の順番の患者さんにお待ち頂く時間がどんどんと長くなってしまうのですね。ヤレヤレ・・・

ついでに、抗生物質と言えば話題になるのは耐性菌です。巷間、薬剤耐性菌の元凶は医者の抗生物質の濫用処方であると言われているのですが、実は抗生物質を服用しているのは人間のみにあらず、家畜にも大量の広範囲スペクトラムの抗生剤が使用されているそうです。遺伝子組み換え作物にも、ある種の抗生物質が多用されているとも聞いています。院内感染と聞くと、さぞかし病院に落ち度があり悪いことをしたがために感染症にかかってしまうと思われがちですが、我々を取り巻く自然環境は色々なことが関連しあって目に見える現象を作り出しているのですね。誰かや何かが悪いと断罪してそれで終わるような単純なお話ではなさそうです。久々に長文となってしまいました。それでは皆様ごきげんよう、受験生の皆さんファイト!!