4月23日 日曜日

良いお天気ですけど少しひんやり。最近なんだかざわざわしている話題があります。元芸能人の方がご高齢となり、実は万引きで逮捕されていたとのこと。背景に認知機能の低下(いわゆる認知症)があったことが報じられています。最近は近親者と離れ離れの生活になってしまい、気分が落ち込む日が多かったためとその記事は続いていました。識者のコメントとして掲載されていた内容には、「認知症になると物事の善悪の判断がつかなくなり、理性がコントロールできなくなったりして、目の前のものが欲しいという衝動にからめ取られてしまうケースがある」とあります。記事の作者の文章ですからどの程度正確にそのインタビューが記載されているのかはわかりませんが、この記載内容だと、何も知識のない方が認知症という疾患を誤解してしまう可能性があるかもしれない、と述べられている先生もおられて、私もそう思いました。認知症というのは物事の善悪の認識がなくなるとか、衝動的な行動が増えるとか、理性がなくなるというのはあまり正しくないのだと思います。主症状はあくまでも近時記憶という、ついさっきの行動や現象に対する記憶ができなくなる病態です。ですので、このような「未払い症状」と呼ばれる症状が出てしまうのです。あるいは支払いのやり方とか、店での買い物のプロセスそのものが記憶からなくなってしまうわけです。よほど進行してくると、失行失認という症状になり、部屋への入室時に、きちんと揃えて置かれたスリッパが何をするためのものかわからなくなってしまって、立ちすくんでしまうというような現象や、汚物を汚物と認識できなくなり不潔行為に至ってしまうという現象は生じますが、社会生活をそれなりに営んでおられるレベルの症状の方が、理性を無くして衝動的な行動に走ってしまうということはありません。私たち医療者の中では、前述のような行動を「万引き」と呼ぶのには違和感があります。もちろん警察に通報して事件として扱うことはできれば避けたいと思います。認知症の初期の方は、すぐに失ってしまうつい先ほどのメモリーを自覚しながら、戸惑い、哀しみ嘆きながら過ごしておられます。そして周りには何事もないような、いわゆる取り繕い現象を呈しながら過ごされますので、にこやかに話をされますし、すぐにはそれだとは認識されないのですね。そんな中で店内のものを買い物かごに入れて、会計を通らずに平然と出ていかれるともちろん周りからは万引きに見えてしまうのも仕方がないところです。今は地域によっては「認知症患者さんへの初期支援チーム」というのが存在しており、何かおかしいぞ?と気付かれた方やご家族からご一報いただくと、主に行政のチーム員がお宅を訪問しインタビューに行って状況把握に行かれます。もちろん警察やお店とも連携しながら、周囲へのご理解を頂きながらその方が無事社会生活を送っていかれるようにするのが目標の活動です。週刊誌ネタとしては目をひく記事になりがちな、高齢となられた元芸能人の万引き事件・・・から、ぜひ多くのかたが認知症への正しい理解と配慮ができるような社会になっていけば良いなと考えています。

認知症初期集中支援チーム