6月14日 金曜日 暑い

日々ワクチン業務を行い、少なくとも厚生省の決定事項にも従いながら従事している身としてなんと対応すれば良いものか。厚労省が定期接種と決めているヒトパピローマウイルスワクチンについて、今夕突然に「積極的な勧奨を呼び掛ける事を一時中止する」という専門部会の決定がプレスリリースされたのであります。いったいどういう事が真相なのかと思い、いろいろなニュースソースを見てみましたが、決定の根拠や、話し合いの内容など全く明らかになっておらず、何とも判断のしようがないという有様でした。各紙締めくくりは「医療現場や保護者に混乱が生じる事は必至だ」とのことです。ワクチン接種が原因で慢性の激しい痛みの副作用が低い頻度ながら起きている(共同通信)という事だそうですが、一方で年間約8000人が罹患し、約2400人が死亡されているという子宮頸癌を予防できる効果との対比として、その”低い頻度ながら”の低い頻度とはいったいどのくらいの数字なのでしょうか?それすら与えられずに、積極的に接種する事を呼び掛ける事を一時中止するように全国の自治体や学校に求める事を決めただなんて・・・一方で接種中止ではなく、希望者はいままで通り受けられると強調されても、もう何がなんだか一般の方にはわからなくなって当然なのではないでしょうか?今日もワクチン業務を行ってきた我々にしても、開いた口がふさがらないとはまさにこの事です。10時からのゴールデンタイムのニュースでも報じられていました。このままでは焦眉の急とされている風疹のワクチン接種などについても影響が出るのではないかと本当に心配されます。少し前のブログにも書きましたが、薬物の副作用は何もワクチンばかりには限らないわけでして、鎮痛剤で重症皮膚炎が生じて命を落とすということも”低い頻度ながら生じている”というのは我々の常識でありまして、どんな研修医向けの専門書にも銘記されています。これをご存知の国民はどの程度おられるでしょうか。ワクチンのセンセーショナルな扱いと比べるとその落差たるや言葉で表しがたい思いがあります。ひとたびメディアで騒がれると、もう言葉が一人歩きして悪者たたきに走るという、この国のいつものパターンが繰り返される事のないように願います。あくまでも冷静に、客観的なデータをもとに、判断をしていきたいものです。もちろん、いままでのワクチンで、不幸にして副作用と考えられる有害事象を経験されている患者さん方には、本当に気の毒に思いますし、何とか医療者も、国としても真摯に対応して行かなければいけないとは思いますが・・。ところで政治や経済の話題では、必ずと言っていいほど、欧米の例を出してきてグローバルスタンダードなる言葉をお題目にするニュースキャスターさん達ですが、世界保健機構(WHO)が積極的に勧奨しているこのパピローマウイルスワクチンが、欧米のある国々では、女子だけではなく、成年男子にも接種されているという”グローバルスタンダード”にはどうして言及しないのかとも思います。いずれにせよこの話題はこれから色々な立場の専門家を含めた人々が情報発信をして行かれる事と思いますので、小生のたわ言はこれくらいにしておこうと思います。今日は色々な思いがありますので写真を貼付ける事もなくこれで終わります。