3月18日 金曜日
今日から☂️マークが続きます。冷たい雨は鬱陶しいですね。さて、かねがね思っていることなのですが、偉い医師と凡庸な医師(私はこっち組ですが)の違いを例えると? ある疾患があって、その診断基準を構成する要素が5個あるとしましょう。その一つ一つを言語化して、認識した上で診断をつけることができる医師が前者にあたります。パッと見た印象を捉えて、ざっくりと診断してしまうのが後者。結果同じ診断にたどり着くことができればいいじゃん・・と思われるかもしれませんが、病気にはよく似たやつ(mimickerと言います)がありますので、やはり細部にこだわる必要があるのです。まあパッと見たものを瞬時に判断するのも忙しい外来では時に有用なのですけど、この瞬間的に判断する能力・・・心理学ではゲシュタルトというそうです。視覚や聴覚などの知覚から入ってくるシグナルを人間の脳は記憶していて、統合して「これは、アレやん」って指令してくれるのです。えらいぞ、脳ミソ。この能力が時々ハングアップしてしまうのがいわゆるゲシュタルト崩壊という現象ですね。時々ありませんか?一つの漢字をジーッと眺めすぎて、次に見た時に「こんな漢字やったっけ・・・?」ってなること。私は昔から結構この現象を人より多く体験しているのではないかな〜と思っています。ついでに言うと、特定の人物のお名前が出てこなくなることも割とよくあります。ご高齢の方達から、最近物忘れが・・・というご相談を受けることがしばしばあるのですが、流石に「私もしょっちゅうありますよ」とは言えないので、そこからは真剣に認知症と単純な物忘れ現象の鑑別に入るわけですけど・・・。人間の記憶の仕組みって不思議です。ついこの間、「TGA(一過性全健忘)」かな?と思われる診断の患者さんにお会いしました。原因はわからないのですが、ある一定時間の記憶がすっぽりと抜けてしまう病気です。その時患者さんは、意識を失っているわけではなく、周りの方からすると、奇妙な言動に陥っていることに気づかれます。大体その方達に連れられて病院に来られますが、ご本人も指摘される時間帯の記憶が全くないらしく、戸惑い困惑している状態となります。不思議な病気だ・・・。そう言えば、名探偵コナンの言う「真実はいつもひと〜つ」と言う名台詞も、真実と事実という概念の差異から言うと、ちょっと異なるのかもしれません。例えば、歴史上の事実というのは、1945年に日本という国がポツダム宣言を受諾して戦争に終止符が打たれたという事柄そのものを指すのであって、誰がどう見てもそうなのですが、歴史上の真実という言葉にすると、その事実を当事者たちがどう見て感じたか?によるので、日本からの視点と、他の国からみた視点としては、その事実の意味合いや解釈、背景が異なるということになります。それぞれの方は嘘偽りのないことを仰っているのですが、微妙にニュアンスが異なってくるというわけです。「真実は人の数だけある」と言われる所以でしょうかね。色々な紛争を解決する裁判というのもとどのつまり、それぞれの人たちの真実を、第三者からみて大体こんなところが「事実」なのではないか?という判断を下す場と言えるのかな?とか考えるに至りました。いかんいかん、こんな時間になってしまった。それではあいにくの空模様ですが、皆さんにとって良い1日になりますように。