8月31日 日曜日 くもり

さてさていよいよ今日で8月も終わりである。夏休み最終日の日曜日は子供達もさぞ陰鬱な気分なのだろう(大げさか)。地区の草刈り行事である。何時からなのかよく知らなかったので、朝6時に起きてそわそわしていた。そのうちに眠くなってきて長椅子で二度寝。「ブーン、ブーン」という音ではたと目覚める。”始まってる!!” 大急ぎで長袖シャツに腕をとおして、首にはタオルを巻くという(不)完全防備で裏口の扉を開けた。毎年我が区がどの場所の担当だったかよく覚えていないので、既に従事しておられる方々の顔をみながらようやく見慣れたグループの界隈に到着し、何となく見よう見まねで草刈り(というより小生は刈られた草運び)に取りかかる。初めはやはりおそるおそる、である。何となく草むらから色々な生物が出てきそうで怖い・・・。ちなみに、周りをみてもこわごわやっておられる方は皆無である。なにも武器を持っていない小生は、専ら刈られた草を束ねて一カ所に山積みにするのが仕事。河川の土手は水面に向って斜面になっているので足場は相当不安定である。よいしょと拾い上げた草の束に、一筋刈りきれていないツルが混ざっているとその途端、思わぬ抵抗に遭い体勢を崩す事となる。こちら岸は斜面がなだらかなのでまだ良いが、対岸の方はかなり急斜面で、しかもその下はすぐに水面となっている。その代わり面積はやや少なそう。ローリスクローリターンかハイリスクハイリターンの選択か・・・などと、意味不明のたとえを思いながら作業を続ける。みれば80歳を数える患者さんも参加しておられるではないか。そういえば、2年前に初めて参加したときよりもあまり息が上がらなくなっているな、基礎体力がついたのかしらん?毎日座ってばかりの仕事でそんなわけもないか。むむ、草に混じってカマキリがいるではないか、それも白い・・・アルビノか?そこに留まってると草と一緒に焼却の憂き目だぞ、と追い払ってやる。なんて美しい心、生き物はみな友達だ(涙)。しかし、中にはマダニもいるかもしれない・・帰ったら速攻シャワーだな。10分も経つと初めの恐怖感はすっ飛んでおり、かなり大胆な行動に出ている。慣れるとはこういうことか、別に特段スキルが向上したわけでも、知識が増えたわけでもないのに、何か上手になったような気がしている・・・その瞬間草の中からマムシが出て来ないとも限らないのだが。「蛇蝎のごとく」とはよく言ったものだ。彼らは(彼女もいるか)まさに蛇蝎の如く忌み嫌われているのだ。実際咬まれると命に関わることもあるし、などと考えるとまた少し怖くなって、軍手にほころびがないかどうか確認する。30分以上経過すると、顔面からは日頃あまりかかない汗が滴り落ちて、やや気分が良くなってきている。これが脳内麻薬というものか・・? あたり一面は、草木や土などの匂いが立ちこめている。花粉のような白い粉も舞い上がっている。森林浴ということばから連想するような心地良い匂いとは言い難く、人いきれならぬ草いきれとでも言うのであろうか。あるいは小説によく出てくる”すえたような匂い”とはこういう事を指しているのであろうか・・・。いずれにしても総合的には、身体を使って土と戯れているというのは悪くはない気分でもある。畑仕事や草取りをしては、腰や膝が痛いと言ってやってこられるおじいちゃんやおばあちゃんの気持ちが何となく理解できる。うんうん、そんなことするから痛くなるのはあたりまえでしょう、と言って叱りつけるお医者さんにも味合わせてあげたいな、この気分。やはり人間は土を耕して、生き物と共生しながら現在までやって来たのである。45分、おそるおそる始めた草刈り(草運び)も何となく要領を得てきた。局所的に完璧に仕上げるよりは、何となく全体を整えて行った方が気分が楽になるし、心なしか仕事がはかどったような気がする。そう、まさにそれは”気”であるのだが、景気とはおそらくそういうものなのだろうな。そう考えると、アベノミクス万歳、どんどんやってもらえば良い。でも、よくよく検証すると、局所から完璧に仕上げて行った方が最終的に効率が良いのかもしれない。昨今行われている経済論争も所詮そんな所に行き着くのかな・・。何だ!みんな草刈りをすれば世の中の事が見えてくるっていう話じゃん。空想の世界からもどると、何やら女性の甲高い声が聞こえる、なじみのある周波数だなあと思いきょろきょろ。やはり、Y病院の看護師さんだった。目が合ったので片手をあげてご挨拶しておく。紅一点ではないが、女性は少数派である。当番日にて中途で切り上げたのだが、皆様ご苦労様でした。

一応医者のはしくれとして感じた事。”半袖はキケン” ”草刈り機械を扱う人はゴーグルを!” あるいは周辺を通る時には要注意。数年に1度は除草作業中に受傷した眼内異物で受診される方がおられると聞きます。かなりの確率で視力を失いますのでご用心を!!

草刈り

(写真はイメージです・・・)

帰り道にご近所の若奥様とすれ違った。「もう終わりなんですか?」「あ、いや当番日なもので早く切り上げさせて頂きました。よろしくお願いします」奥様も半袖でした・・・。