3月14日 土曜日 雨
医院の併設ブログなのでたまには医療のお話をしなくては・・。「お腹にぶつぶつが・・」という問診票です。問診票を見た瞬間にピンと来る病気の例というのが幾つかありまして、これもそのうちの一つです。帯状疱疹という病気で、俗にヘルペスと呼ばれているものです。varicella zoster virusという水痘帯状疱疹ウイルスという微生物によって罹患する病気です。一度水ぼうそうに罹患すると、それが治癒した後にもウイルスが脊髄神経後根神経節という部位に潜伏して、潜在感染の状態がその後ずっと続いているのです。何らかの理由でそれが活性化されると、神経に沿って広がり、水疱形成という皮膚病変と神経痛を引き起こします。ぴりぴりとした痛みとかいう表現で、ひどい方は強烈な神経痛に至る場合もあります。いずれも初期の段階で抗ウイルス薬の投与を行う必要があります。好発年齢は60−80歳代のご高齢の方ですが、子供でもかかることがあります。水ぼうそうは冬から春にかけて発生が増加して、夏休みになると少なくなるという季節性がありますが、帯状疱疹に季節性はありません。身体のどの部位にでも生じるのですが、肋間神経痛を引き起こす胸部や、三叉神経領域の顔面などに発症すると見た目にも痛々しいものです。この病気、そもそもが水ぼうそう感染なので、今年度から定期接種となった水ぼうそうワクチンが普及すると、将来罹患される患者さんの数は減少するのではないかと思います。ワクチンの効果ってこどもの時代にだけその恩恵にあずかるものではないのですね。
ちなみに、帯状疱疹を防ぐための大人になってからの予防注射もあるのですが、まだ一般的には使用されるには至っていません。大人になってからの水ぼうそうワクチンでも、一定の予防効果があるという説もあります。また、水ぼうそうの子供達と日常的に接する機会の多い保母さんや、小児科医はヘルペスになり難いという話もあるようです(真偽のほどはよく知りませんが)。感染症ってまだまだ未解明の事が多いです。