10月25日 火曜日
いよいよ寒くなってきた。半袖の診療着で診察をしていると、「先生さすがやね〜、病気なんかしはらへんのやろうね」と言われる・・・。とんでもない。病気の宝庫である。たまたまそれがマイナートラブルであるだけなのだ。医者の不養生と昔から言うではないか(紺屋の白袴、も息子の受験の時に教えてもらったな。)。何事も身を以て知ると言うことは大切である。医者たるもの、患者の痛みや苦しみを体験しておくことは(それは出来る範囲で・・ですが)、大いに診療の参考になるものである。この間は指の怪我の時に、自分でオベルスト麻酔と言う方法を試してみた。なるほど・・そう言うことだったのか。ちょっと教科書の話と違ったな・・なんてことがわかったりして。
ところで、診察室に高齢患者さんと、その娘さん・・なんて言う組み合わせで受診に来られることがある。双方のお話を聞くことが出来るので、それは貴重な機会である。そこで、お互いのお話をお聞きするのだが、往々にして食い違うことが多い。いや事実は一つなのだろうが、その解釈や目の付け所が異なっていると言うことだけなのかもしれない。普段患者さん本人からしかお話を伺うことがない場合には、こちらから「次回はどなたかご家族といらしてくださいね」などとリクエストすることすらあるのだ。そこで、双方のお話が食い違ってしまって、お互いに反目されたりすると、果たしてそのリクエストが良かったのかどうか悩んでしまうことも珍しくはない。(介護を)する側とされる側・・・それなりにお互い言い分ってものがあるのだな。介護者の方のお話を聞いて、必死で反論される患者さんもいれば、ただただ目を閉じて首を横に振っている方もいる。そうかといえば、お互いにニコニコしながらのんびりした雰囲気で終わる場合も・・人それぞれだ。する側の言い分、される側の理屈・・・双方の事情ってものがあるのですね。
向田邦子さんの作品によると・・・
「おとなは、大事なことはひとこともしゃべらないのだ」ってことだそうです。含蓄あります・・・