6月30日 日曜日

昨日はイギリス人医師の医学教育講演をウェブで聞いていました。言語は英語と日本語と混在したような感じで面白いものでした。症例提示が行われて、それについて指導医が(答えを知らない)絞り込んでいくという立て付けのものです。今もやっているのでしょうか?NHKのGドクターのような感じの作りですね。当院でも年に1例程度あるかな・・という頻度の疾患で、その経過がかなり稀なものになっていくというケースでした。最終的にMRI検査でその謎解きがされていったのです。その状況変化の結果としてわかった病態は、特徴的な画像診断所見を呈するもので、比較的新しい病態概念を生み出したのです。しかしながら、その病態がわかったとしても、特異的な治療方法があるわけではなく、というか治療をせずとも自然に寛解していくと言うものなのです。その病態を解き明かす、新たな疾患概念を確立する必要があったのかどうか?言い換えると、それがわかったところで、何か医療に貢献するものがあったのかどうか?考える必要があるのではないかと言う結論に至りました。その一方で、その検査にはそれ相応の時間と人手と医療費を必要とするのです。なかなか考えさせられる視点が織り込まれた秀逸な講演であったと思いました。そもそもMRI検査へのアプローチは、世界でも我が国や、隣国である韓国、あるいはオーストラリアなどではとても容易なのですが、英国やアメリカでは、健康保険などの縛りから、そうはたやすくできる検査ではないのですね。純粋な医学的見地からは、もちろんそのような新病態の解明は進歩になるのでしょうけれど、もしかすると社会が成り立つと言う上では必要のない進歩なのかもしれません・・・。最後の雑談コーナーで、英国の指導医が自ら受けていた教育期間の回顧をされていました。研修医はとにかく、怒られ、怒鳴られ、休みなく働き・・・みたいなことを仰っていたのが、なんだか自分の若い頃を思い出すようで、感慨に浸ってしまいました。彼も今は言います「研修医のみならず、勤務医は、勤務時間が終われば直ちに帰宅の途につくべきである、いや・・つかねばらない」と。欧米での10年前の常識が、ようやく我が国でもこの4月から担保されようとしているようです。頑張れ全国のトレイニー達!