7月11日 土曜日

朝からやはり雨音で目覚めました。最近15年前に知り合った気の合う(と、少なくとも私は思っている・・)ご家族と旧交を温める機会がありました。ま、オンラインのお話ですが・・。変わらない感じでよかったです。やっぱり人は変わらないものに出会うと癒されますね。これからの社会はもちろん変わっていくことで大変便利になると思いますが、変わらないことの大事さを時々噛みしめることにしたいものです。

さて、存在しないお話にうつりましょう。週刊誌の見出しで見ないことがない「免疫力」という言葉です。何々を食べると免疫力がアップする・・・とか、驚異の免疫力増加・・・とかいうのはほぼ眉唾ものだと考えて間違いはないです。免疫とは何でしょう?大きく分けると三つです。自然免疫・獲得免疫(抗体)・獲得免疫(リンパ球)の3要素で構成されるものが免疫です。自然免疫とは、言葉通りもともと身体に備わっている免疫機構のことです。マクロファージとかNK細胞とかいうような細胞がその役割を果たします。例えばマクロファージは貪食機能と言って、身体に不要な物質を何でもどんどんと飲み込んでいく掃除屋さんの細胞です。自然免疫の代表株なのですが、それと対照的に獲得免疫とはその名の通り、生まれつきには備わっておらずにあとで獲得される免疫機能となります。これを利用したのが予防接種ですね。身体に病原微生物の特徴を覚えさせて、のちに侵入してきた微生物をいち早く検知して殺傷していくことでそれらから身を守るという役割を果たしています。それにはB細胞の産生する抗体という手段と、T細胞というリンパ球による手段があります。免疫力が上がる・・というのはそのうちのどれかを補強するということかと思うのですけど、何かの微生物に対して抵抗力を持つということはさほど単純なものではありません。免疫力が上がると必ずしも身体に有益であるとも限りません。逆説的で驚かれるかもしれませんが、実際に新型コロナウイルスでも、サイトカインストームと言われる免疫が吹き荒れたような状態の患者さんが重症例になっていることを聞かれたことがあると思います。激しい免疫機能によって受ける影響は必ずしも身体に有益であるとは限らないのです。あるいは自己抗体と言って、特定のタンパク質に対する抗体ができることにより、自分自身の体を攻撃してしまい病気になるということだって存在します。もう一つ例を挙げると、免疫には抑制性に働く細胞も存在します。そういう細胞がいることで、先述した自己抗体による免疫系の暴走を防いでくれているのです。複雑なネットワークによって身の安全が守られているのです。笑いは免疫を上げてくれる、というお話を聞かれたことがあるかもしれません。確かに試験管内で、笑いの後の検査をするとNK細胞の活性化が見られるというデータもあるのでしょうけれど、それと実際に風邪にかかるかかからないかはまた別のお話です。何かを食べて免疫力を上げる・・というのは、個人的な志向でやるのはいいと思いますが、それで何か特定の商品を購入させようとしている邪な考えのツボにはまらないように気をつけてください。ただ・・一般論として、規則正しい生活、十分な睡眠、十分な栄養摂取などが、病気の予防に重要ですよ、という呼びかけは正しい妥当なものですので、特定の何かにこだわるのではなく、ちょっと俯瞰的に大きな目で自分の生活を見直しながら過ごしていただくのが良いでしょう。と書いてきましたが、明らかに免疫力をアップする方法が一つだけ存在します。それは・・予防接種です。コロナウイルスのワクチンの開発に凌ぎを削られる状況の昨今ですが、一方で小児の予防接種率が病院受診をためらうがために低下してきているという報道もあります。感染症は新型コロナウイルスだけではありませんので、遅滞なく予防接種が受けられるような配慮を我々も講じていかなくてはならないと考えているところです。1700年代に発見されたこのワクチンという手法が、21世紀になってもまだ大切な私たちの身体防衛手段となっていること・・ジェンナーさんに感謝です。ふ〜・・土曜日の朝は雑用業務が少ないので、ちょっと張り切ってたくさん書きました。

それではみなさん、良い週末を(大雨災害の被災地の復旧がいち早く進みますように・・)