10月6日 火曜日

昨日からインフルエンザ予防接種を開始しています。メディアでのアナウンスもあって接種希望の方の数は多くなりそうな雰囲気です。ワクチンの流通は例年より多い量が見込まれているようですので、十分に供給可能であると言われています。しかし多くの方が殺到されるようになると、一時的に品薄になる可能性はあると思います。それぞれのライフスタイルに合わせて、焦らずに来院あるいは予約して頂ければよいのですが、メディアでのアナウンスが高じるとやはり我先に・・となってしまうのが群集心理というものでしょう。何とも難しいものです。

さて、週末に流れていたニュースで気になったものがあります。「大学院の博士課程学生数がピーク時の半分に」というものです。折しも昨日から今年のノーベル賞受賞者の発表がはじまっています。2008年から、2010年、2014年、2015年とこのところ複数名の受賞者が日本から出ています。そう聞くとさぞかし日本のアカデミーは盤石なりと思われるかもしれません。しかし、受賞されている実績はもうかなり昔のものがその対象になっています。まさに今見ている果実は過去の産物なのですね。ちょうどコロナウイルス感染症の新規患者数が2週間前の現実をみているということを連想してしまいました。文科省の統計によると、修士課程から博士課程にすすむ大学生は平成15年のピーク(12000人)を境に、その後減り続けており昨年度はその半分以下(5963人)にまで落ち込んでいるといいます。その背景にあることとして、目先の成果を優先する現在の風潮や、学位がそれほど後の人生に役に立たないということなどが、わが国の特殊な状況の理由ではないかと指摘されていました。確かに他の先進諸国ではこういう現象は見られておらず、米国、韓国、中国など軒並み学生数は増加しているということです。これは大変に憂慮すべき事態であると私は感じています。選択と集中という掛け声での号令の下で、短期の成果を追い求めるこの国の病理がこういった現象を引き起こしていると思います。独創性のある発想や優れた研究成果は、意外なところから予想を超えた偶然の産物としてもたらされることもあるでしょう。今回のコロナ感染症でも学んだように、一見無駄かもしれないと思われるようなところにもお金と時間をかけておくことは私たちに今求められていることなのではないでしょうか?