6月23日 月曜日 くもりときどき晴れ
以前にも少し触れましたが、混合診療解禁の話題です。患者申立て療養制度っていうのでしたか、呼び名は違えど、実質は混合診療解禁ということなのでしょう。賛成派の理屈は「反対派は既得権益を守ろうとしているだけだ!!」などと言いますし、反対派は「一旦認めてしまうと、皆保険制度が崩壊し、医療格差が大きくなるだけの最悪の政策だ!」と言って譲りません。が、それらはあまりにも極端な理論なのだと思います。もうすこしそれぞれの言い分を見てみましょう。そもそも混合診療とは、保険診療と自由診療の混在する状態をさす言葉です。これが認められない場合(現在そうなのですが)どうなるのか・・・例えば、現存の治療ではなす術の無い状況になった進行がんなどの場合を考えて下さい。外国では認められているけれど、我が国では保険未承認のがん治療が存在するという場合に、入院して保険診療と合わせてその治療を受けると、保険診療分も合わせて全額自己負担になるのです。その結果、保険診療分が20万円、保険外診療が10万円だったとしますと、混合診療が認められない状況では、全額自己負担になりますから支払総額は30万円ということになります。一方で混合診療が認められると、保険診療分の20万円は3割負担の場合、6万円プラス保険外診療が10万円で合計16万円ということになり、その差が14万円ということになります。すなわち、保険外診療をオプションとして受けたい場合は混合診療解禁の恩恵をそれだけ被る事ができるというわけです。ならば、さぞかし難病の患者さん達は喜んでいるのだろうと、思いきや・・・事実はさにあらず。全国82の難病患者団体が加盟する「日本難病・疾病団体協議会」はそれに反対だというではありませんか。かれらの主張を読むと、保険外診療の妥当性の判断を審査する期間の短縮は患者の願いではあるが、数週間という短期間で、そのリスクを本当に判断できるのか?という疑念や、公に自由診療が認められると、本来保険収載されるべき治療まで非保険診療のまま据え置かれるのではないか?という懸念を抱いているようです。そして、そのような疑念や懸念は、まさに解禁反対派の論拠となっている所なのです。すなわち、自由診療のままに据え置かれても利用者が生まれるということによって、製薬会社は保険診療承認への面倒な臨床試験を行うモチベーションを失い、結果として、自由診療などに手の届かない人たちが、本来保険収載されるべき治療を受けられずに、その余波を食うのではないかということ。さらには、そもそも国の保険財政が厳しい事から、国自身も自由診療枠を拡大して、保険負担部分を減らしたいという思惑があるのではないかとみるむきもあるようです。そこへ持ってきて、TPPなどとの絡みで株式会社の医療への参入等が起これば、株式会社◯◯病院では、自由診療部門がきらびやかな入り口で高級感あふれる建物と医療を提供しつつ、裏口の保険診療部門では経済的ゆとりの少ない人々が待ち時間でごった返しているというようなことが現実になるのではないか、ということまで想像している方もおられるようです。果ては国民皆保険制度の破綻に繋がるのでは・・という懸念まであったりして。まあ、話はどんどんと広がって行くので、小生にもどこまでが真実なのかはよくわかりません。ただ、今回のお話が成長戦略という文脈で提案、決定されようとしている事がひっかかるということだけは申し述べておきたいと思います。
ま、アクセスの良さは日本の医療制度の優れた点でもあったのですが、それも大病院の初診料自己負担化などで揺らいで行かざるを得ないのですね。財政面を考えると、やはり便利だから・・だけでは成り立って行かない困難な状況にある事だけは間違いないので、我々一人一人の問題として考えて行かねばなりません。