10月20日 日曜日
昨日と変わって朝から晴天です。書店巡りの週末を楽しんでいます。リアル書店が地域から減っているという記事が日経新聞にありました。その隣には、銀行やコンビニに設置されているATMが減りそうで減っていないという記事。数日前にはキャッシュレス決済の諸問題などのお話を伺ったばかりでもあり、時代の移ろいを感じながら、将来はどんな社会になるのだろうという、ありふれた素朴すぎる疑問に頭の中に?マークを作っています。書店で物色した書籍に、医師のエッセイを数冊交えておきました。3冊選んだのですが、3冊とも病院での待ち時間問題に触れられています。私の日々の診療でも、頭を悩ませることの一つであります。私が物心ついた頃(いつやねん)から「1時間待ち3分診療」と揶揄される決まり文句は今でも生きているようです。研修医の頃、シュライバーと言って教授の診察室の横で処方箋を書いたり、検査の説明や案内をしたり、同意書を取ったりするお仕事がありました。思い返すと、診察時間の始まる9時を過ぎてもなかなか姿を見せない教授に、担当の看護師さん共々ソワソワしたのを覚えています。古き良き(?)時代です。オーバーナイトの当直明けのシュライバーは、たいそう眠たく、船を漕ぎ漕ぎやっていたのを思い出します。おそらくそんなブルシットジョブはもうなくなっているのだと思いますが。ま、そんな感じで教授の診察は待って当然・・みたいな空気もあったのかもしれません。話は逸れましたが、待ち時間の解消策ってそれほど簡単なことではないのです。大学病院や大病院では、時間予約を設定して、その日の診察患者はある程度あらかじめ時間割を決めて来院していただくシステムになっていると思います。昔に比べてかなり待ち時間は減っていることでしょう。それならどんな病院でもそうすればいいのでは・・と思うのですが、病院の規模や地域や果たすべき役割によっては、そうもいかないのです。さらに、待ち時間を設定したら設定したで、ちょっと予期せぬことが生じた場合に発生する時間遅れに対する待ち患者さんたちの耐性の問題も生じることでしょう。約束の時間が来ているのに呼ばれないです・・・という訴えに対応する受付事務員の嘆きを耳にすることもあります。場末の小さな私どものクリニックではどうでしょう?もちろん時間予約制にしているところもあります。それでは、一人当たりいかほどの時間を取ると良いでしょうか?5分と設定しても、1時間あたり12名診察で、午前午後フルに見積もってもせいぜい60−70名となります。クリニックによってはそれでは回らないことになります。また、慢性疾患の定期受診患者さんだけではなく、発熱や体調不良の方に対する対応も大きな役割の一つです。時間予約で埋めて行くとしても、間にそういった当日発生のニーズの方への空き枠も準備しておかなくてはなりません。病院に期待されるニーズによって、臨機応変にその辺りの組み合わせを変えていかないといけないということです。一昔前なら、診察室の机の上に、待機患者さんのカルテが積み上がっていったのですが、今は電子カルテですので、画面上に「診察待」が蓄積されて行くのを横目で見て、焦りながら診察することになります。私の今の対応策は・・・3分診療どころか、ある時は1分診療、また別の人には10分診療か、もしくはそれ以上の時間をやりくりしながら、なんとかその日その日を切り抜けるという感じです。無論、その日短い診療時間しか取れない患者さんには大変申し訳ないのですが、その方が、また別の日に自分が体調不良になった時には、他の人の時間を削って長い時間を割くことになるのですから、全体を通して皆さんに納得してもらうしかないのかなと考えています。2−3年前のコロナ禍の頃には、まさに慢性疾患の患者さんに皺寄せを受け入れてもらいながら、何十人もの診療ニーズに応えていかなくてはならない時期が一定期間続いたこともありました。地域医療をみて行くというのは、その辺りの塩梅を考えながら、理想と妥協の産物としての診療をやって行くしかないのだと考えています。病院待ち時間への完全無欠の対応策は私にはありませんし、これからも見つけられないのかもしれないと考えています。医療DXが少しでもそういう諸問題の解消につながってくれることを念じながら、これからも頑張ってやっていかないといけないな〜と思いながら、今回の書物のページを閉じるのでありました。