6月16日 土曜日 雨

元巨人軍の江川卓さんは飛行機に乗る事が苦手だそうである(奥さんは確かCAだったような気もするが)。曰く「その理由は、見ず知らずの機長さんが操縦していること」だそうだ。なるほどなと思った。

医療の世界では、手術などの侵襲的な処置をする場合には必ず同意書なるものに署名をもらう事になっている。どんなに細心の注意を払いながらそれを行っても、偶発的な合併症が起こりうるのであるということを理解してもらうためである(決して何があっても知りませんよ、っていう意味ではない)。患者さんと向かい合って、その事を説明し、理解をしてもらうという過程でお互いの人間関係や信頼関係が作られて行くという事はとても大切な事であると思う。

医療と言わず、身の回りの事には常に色々な危険性が潜んでいることに気付かされるものである。極端なたとえではあるが、近所のスーパーに牛乳を買いにいくにも、その途中で、暴走してくる車にひかれる可能性だって否定はできない。要はそんな些細なリスクよりも美味しい牛乳を買って飲む事の価値が上回るからそれを買いに行くのである。などと書くと、そんな大げさなっていう指摘をいただきそうであるが、常に我々の頭の中では無意識のうちにそういうリスクベネフィットの計量的な思考が行われているのではなかろうか。見ず知らずの人が作った飛行機を見ず知らずの機長が操縦していることをリスクと考える度合いは人それぞれであろう。善し悪しの問題ではない。そいういう考え方もあるのだなあっていうお話である。前段に戻って、顔の見える医療とは・・・このような日常的な駄文であっても、患者さんにとって、少しでも小生の人間性の理解に役立てて頂ければ幸いである。