8月26日 水曜日

毎回感染症の話題です。能がなくてすみません。メディアでは新型ウイルスのPCR検査が徐々に整備されており、受けやすくなっていると報道されていると思います。これすなわち、当地でも少し熱が出ればすぐに検査を受けることになるということと同義ではありません。以前にも申しましたが、検査には事前確率を考慮するという大事な作業があります。要するに検査を受ける前に、その病気に罹患している可能性がどの程度あるのか?ということが極めて重要になります。世田谷区の一斉PCR検査が賛否両論あるのはそのためです。さてことほど左様に注目されることとなった事前確率という概念ですが、実は古くて新しい問題なのです。皆さんの中で、人間ドックで腫瘍マーカー検査を受けられたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?何も異常を感じていない方が、年に一度がん検診を受けてみようということで、採血検査でガンを見つけることができるのなら・・ということでオプション項目に丸をするわけですね。コロナと全く同じ問題がここに発生することになります。「偽陽性」という問題です。あとあと色々調べても何も出てこなかったけど、検査で陽性である(ガンである、コロナである)と判定されるケースがあるということです。日本臨床検査医学会の発行する臨床検査のガイドラインという冊子の表をお借りするとこのような例が提示されています。

無症状の方への大腸内視鏡検査でガンが発見される確率は統計上約1%です。そのような対象群1000名の方に腫瘍マーカー検査を行うと、陽性と判定されてしまう方206名のうちで、真にがんが存在する可能性は8名のみ(3.8%)にすぎないということになります。残りの198名はいわば濡れ衣を着せられるという結果になります。その方達は、濡れ衣の不安の中で、その後ガン探しに病院を行ったり来たり翻弄されることとなります。時間とコストの面からも大問題です。何より不安で精神的にも参ってしまいます。もちろん8名の方にとっては、検診受けてよかったね・・ということなのですが、残りの198名に自分が入ってしまうかもしれないという可能性をよく考えてからオプション検査の希望項目に丸印を入れる必要がありますね。新型コロナウイルスは色々なことを私たちに教えてくれています。

そこで・・・初めの論点に戻りましょう。やはり私たちの地域では、コロナウイルスの有病率はそもそもテレビで騒いでいる自治体とは比べものにならないくらい低いです。ですから、病院で即検査とはならないことが多いです。これ、何も知らなかったらこんな地域ではまだまだ検査なんて受けられないんだなと悲しく思われるかもしれません。都会はすぐに検査してくれるのに、田舎では・・・といじけてしまう方もいらっしゃるでしょう。そこで上の理屈を思い出して欲しいのです。都会を羨む必要は全くないのです。私たちは都会の人たちに羨ましく思っていただくような、罹患率の低い地域に住んでいるのでそこは喜ばないといけないところなのですね。ま、気が休まるような休まらないようなお話でしたでしょうか・・・?それではまた。