5月10日 日曜日
現在、外来をしているとコロナに相当メンタルを傷めている方がいらっしゃいます。むりもないです。幸か不幸か私たちは法的強制力を持たない言葉で、私権の制限を伴う生活や経済活動の自粛を求められ1か月が過ぎようとしています。みなさんの心の中には、私のせいで感染が広がってしまったらどうしよう?という不安にやられている方が少なくないと思います。自分が罹患する心配よりも、他人へうつしてしまう心配のほうが精神を蝕む度合いが高いのだなと感じています。万が一、自分が絡む感染者が発生してしまったら、ほらあなたの自粛は甘かったんですよ・・・って責められそうで怖いですよね。先日営業自粛のためテイクアウト対応のみで活動されている飲食店店主さんがおっしゃっていたことが印象的でした。『とにかく、みんな自分のところから感染者をだしたくないとその一言ですよ』 この思い、実は私たち医療者も相当程度考えていることと一致します。さらには現在議論されている学校休校の延長か解除か問題も、突き詰めるとその問いに行き当たるのではないでしょうか。仮に、休校解除したときに、不幸にして児童や学生から感染者が発生した場合に沸き起こる世論のレスポンスって容易に想像されますね。『ほら、だから・・・』 そもそもこの感染症ってチキさんの言葉を借りると”ワンストライクアウト”の疾患だということなのです。つまり、それまでどんなに念入りに気を付けた生活や行動をしていても、ちょっとした気のゆるみでたった一度だけウイルスとの接点を持ってしまうと、ハイ!感染成立 (やや誇張していますけど)なのです。そんな状況をみなさんひしひしと感じているので、自粛要請ですよ、みなさんよろしくね~っていう圧力!!!を感じ続けてはや1か月ですもの、これはきついですよ。逆に強制的にこうしなさい!って言われて、いざ悪い方向に行ったとしても、まあ仕方ないかっていう扱いを受けたほうが気が楽ですからね。ただこの強制力を伴わない自粛要請も小生は、法的強制力のない自由の保障という観点からはとても価値のある大事なことだと考えています。これを生かすも殺すも私たち次第なのかな。みんながある一定のリスクを引き受けて、思っていたことと逆のことが生じた場合にも、何かの政策決定をした人や行動をした人を非難する方向に向かうのではなく、寛容な気持ちで住みよい社会をつくっていく意思を持つことが求められているのではないでしょうか。