6月17日 水曜日

真に受ける・・今の私のキャッチコピーです。

開業医、毎日外来診療を預かる身として患者さんと相対してまず行うことは、患者さんの訴えを聞くことです。医学部で勉強する診断学とか症候学とかに出てくる言葉以外にも、それはもう本当に色々な訴えがあるものです。私の一番苦手な訴えの筆頭は「えらいんです」です。えらい・・わかりますよ、もちろん。でもそれの言葉の背景を掘り下げると、それは例えば、息苦しいであったり、吐き気を感ずるであったり、腹部膨満感だとかめまいふらつきだったりするのです。それを各自それぞれの基準でひとこと「先生、えらいんです」という表現になるわけなのです。えらいんですに続くさらなる問診によって、病気の可能性をどんどんと絞り込んでいく作業・・特に聴力低下のあるご高齢の患者さんなどの場合にはとりわけ困難なものとなっていきます。若い方でも、しんどいのでぐったりとされているのか、あまり症状を詳しく述べることができない場合も結構苦労します。診察手技だけで、問診なく正当な診断に漕ぎ着けることは困難なのです。なので、病院では症状とそれが生じた時間経過をなるべく詳しく伝えて頂けると助かります。これと似たようなことかもしれないのですけど、開業医として一番大切なことは何か?折に触れて自問している問いです。今なら、それには「真に受けること」と答えるでしょう。患者さんの訴えをまずは真に受けて一度引き受ける・・ということです。以前に、各患者さんの診察をするたびに一度自分の心をリセットすることが必要だって申し上げたことがあると思うのですけど。それと通底することかもしれません。あることを異常と感ずるセンサーの基準は各個人でまちまちですし、同じ人でもその時の状況によって変わるものだと思います。他人にとっては取るに足らないと感ずることでも、当人にしてみれば重大事案になっているから病院に行くわけです。医師はその方の訴えを、背景や状況やその人の健康観(正常と異常の境界基準)に合わせて聞いていく必要があると思っています。その上で身体的な異常を疑うのであれば、さらなる検査で追求していきますし、身体的異常がないと思われる場合には、その方にそう思わせている原因を探ることになります。毎日毎日こういう作業の繰り返し・・それが開業医のお仕事ですね。感覚的には、階段を一段一段登っては、次にまた降りて、また登って・・・一日が終われば、やっぱり元の場所にいたな・・ジブンって感じです。充実感があるような、でも何も残っていない(全てやり切って元の場所に戻ってる)というのが良いような・・けっこう複雑なおしごとです。多分「ちょっと何言ってるかわかんない」的な内容ですね。

それでは今日もお天気が良さそうなのでがんばって労働することとします。