5月6日 木曜日

思えば、医学部を卒業して社会に出てからは鑷子とメスを手にしながら医業を営んでまいりました。どちらかと言うと技術を大切にする外科という分野を歩んできたものとしては、知識よりワザ(本当はそうではないのですが)という世界に慣れ親しんで来た感じがします。しかし縁あって10年足らず前に開業した現在、再び知識とか、コミュニケーション能力とか、患者心理とか、そういったものを相手に勉強をし始めました。しばらく遠ざかっていた座学も再開して久しいです。ある意味、医学部に入りなおしたようなところがありますね。そういえば・・・診察室の二階にある休憩室(最近は物置部屋と化していますが)には、尊敬する先輩から頂いた一本の医療器具があります。打鍵槌です。膝頭をトントンと叩いて足がピクン!となるかどうかを見る、そうアレですね。それもとっても大きなヤツです。糖尿病などの場合には神経学的な合併症が発症することがあり、その際には足首の裏側のアキレス腱反射などをチェックしたりもします。そんなときにはこの大きめの打鍵槌が効果的なのです。ずっしり重い感じの打鍵槌です。内科の診察って今では血液検査とか画像診断が発達していますので、体を診るということがおろそかにされがちな傾向があります。しかし、やはり診断学は病歴聴取と身体診察が基本なのです。診察時間がおしてしまって、急いでいるときにおろそかにしてしまいがちな診察所見ですが、それはダメだと事あるごとに自分を戒めることにしています。同時に、その道具を見るたびにいつも自分が励まされているような気がして、心強く感じることができます。私の現在の一番大事な宝物のうちの一つのその診察器具、これからも大事に大事にしていきたいなと思っています。先輩ありがとうございます!これからもどうぞよろしくお願いします。