4月5日 日曜日

近くの神社の桜が満開に近い。市内ではこの雨で開花のピークは過ぎるようだ。今年も千鳥ヶ淵の桜は満開になり云々というテレビのニュースも毎年毎年この時期に目にする予定調和ではあるが、患者さんとの話題もやはり桜の話になったりする。御所の近くを車で通り過ぎたのだが、雨の中を春の一般公開に合わせて上洛されている観光客で一杯であった。せっかくの旅行なのにあいにくの雨は残念なことだ。そういった観光客の中に、女の子とそのお母さんとおぼしき女性の二人連れ、というのも目立った。勝手な推測だが、この春に他府県から下宿先を探してようやく引っ越しを終えて、さあ週明けに入学式、その前にひとつ京都見物でも・・と街に繰り出しておられるのではなかろうか?何となく初々しい面持ちの女の子が印象的であった。一方では、今春に残念ながら進路が決まらなかった若者たちもいるであろう。それもまた人生だ。何も一度の入学試験で人生が決まるものでもなかろう、悔しさをバネに頑張って欲しいものだ。悔しさや悲しみが人を育ててくれるって言うのもまた真実であろう。負けるが勝ち・・っていう言葉もありますからね!(あ、これはあまり励ましになってないな・・)

千鳥ヶ淵

そうそう・・開業医のおしごと。ひとつは、今現在かかっている病気を治すこと・・これは当たり前ですね。幼稚園児に聞いてみるとたぶん直ちに返ってきそうな答えです。もう一つは、将来起こるかもしれない病気を予防する為にいま何かを行うこと。例えば糖尿病や高血圧、コレステロール異常の治療もそういうことなのです。つまり、血糖値が高いからと言って今ただちに何か有害なことが生ずる訳ではありません。あくまでも高い血糖値を治す目的は、将来起こるかもしれない合併症、特に生命を危険にさらすような大血管障害(脳卒中や心臓発作のことです)を予防する為なのですね。そう考えると、いわゆる後期高齢に相当するご年齢の患者さんももちろんですが、40歳から60歳の年齢層の方に対する治療は大変重要なものとなります(と誰でも思いますよね)。ところが、そういう方は皆さん日々忙しく働いていらっしゃいますので、2週に一回はおろか月に一度の受診だってままならないわけです。ましてや、毎日30分汗をかくくらいの散歩をしてください・・と言ったって、夜遅くまで働いて、朝ギリギリに起きて食事もせずに通勤している方がそんなこと出来るはずも無く、絵に描いたボタモチとなってしまうのです。中には十分な時間をもって体調管理や食事運動療法に費やすことの出来る方もいらっしゃるでしょうが、大多数の「そうもいかない」患者さんに対して、いかに治療に対する動機付けを維持しながら、100点ではなくても出来る範囲での精一杯の努力を引き出すことが出来るか。もちろん治療に必要な経済的負担も無視できない要素となります。生意気なようですが、開業医の腕の見せ所とは、そいういうことを時には直にお話ししたり、なんとなく推測したり、お気持ちを斟酌しながら、いかに細く長く(太く長くが理想的ですが)おつき合いして頂けるか・・・ということなのではないかなと思ったりしている今日この頃です。お父さんの診察にいっしょについてくるちびっ子には「パパに、長いこと元気でいてもらわんと困るやろ〜」って呼びかけてるフリをしながら、お父さんのお気持ちに訴えかけてみたりして・・(ネタバレあり)。