京都府与謝郡与謝野町 内科・外科・リハビリテーション科・在宅診療 いとうクリニック

ふくろうくんのブログ

NO的なるもの

9月15日土曜日

NOはNew Orleansのことです。もうかれこれ10年ちかくなるのでしょうか。壊滅的な打撃をうけたハリケーンカトリーナの直撃の直前に帰国したのですが、楽しい街でした。一言で表現すると、”泥” ”汗” ”ドブネズミ” ”ザリガニ” ”沼地” ”ワニ”・・・次から次へと褒め言葉のオンパレードが連想されます。褒めているんですよ、あくまでも。京都?って言われてもこれだけの迫力あるたとえにはならないですね。思えば日本にこんな場所はなかなか存在しないです。日本のラテンと称される大阪でもせいぜい”道頓堀” ”たこ焼き” ”ヒョウ柄のおばちゃん”・・まちがっても泥とかどぶとか言おうものなら、袋叩きにされそうです。まあその実、かの地も”deep south”と呼ばれる複雑な歴史的過去を背負っている土地ではありますが。人間も社会システムも、きれいに出来上がった既製品よりも、少しキズのある個性的な方がお茶目なのかもしれません。そんなNOも、かつてフランスの皇帝ナポレオンが失脚して亡命した場所である事は広く知られていたりそうでなかったり・・・。なんでいきなりこんな話かというと、ネットでたまたまニューオリンズセインツというアメフトのチームの記事を見かけたからでして。すこし懐かしくなったわけです、ハイ。

 

 

 

 

中心部のフレンチクオーターはフランス植民地帝国の香りを漂わせる、雰囲気のあるシブい街です。ケイジャン料理と呼ばれる庶民のレシピとクレオール風といわれる都会的なレシピは双方美味しいものです。ちょっと辛めのケイジャン料理が個人的には軍配ですが・・・

わずか4%の隔たり

9月14日 金曜日 晴れのちにわか雨

人間に一番近いとされている動物のチンパンジーは、その脳の体積をみるとヒトの3分の1くらいであるそうです。それでありながら、チンパンジーは一瞬だけしか表示されない複数の桁数の数字を瞬間的に記憶できる能力がとても優れており、そういう意味ではヒトの能力を遥かに凌ぐそうです。アイちゃんやアユムくんの研究で知られている京都大学霊長類研究所の松沢教授によると、彼らの認知能力は、『そこにあるもの』(みえているもの?)に集中しているらしく、人間は可視範囲を超えて認知しようとする力に秀でており、それこそがヒトをヒトたらしめているのではないかと主張されています。寝たきりになったチンパンジーは将来を悲観することをしないため、きわめて普通に元気に振る舞うそうです。一方、人間は『そこに存在しないもの』までをも想像し、考えを巡らせるが故に、絶望や後悔をするのだと仰っています。厳しい自然界で生き抜くために、そこにあるものを見抜く力に秀でたチンパンジーと、複雑な社会を渡るために、見えない将来を想像する力を獲得した人間。また一方では、まだ見ぬ将来に絶望する人間は反対に、絶望をするからこそ希望をもつこともできるのだということもできるだろうということです。DNAレベルで見るとほんのわずかな4%の隔たりが、見た目や特性の大きな違いを作っているのですね。身体を構成するタンパク質(もとはアミノ酸)は3つの核酸の配列で決定されますので一つのDNAの違いが全く違うタンパクを誘導しうるわけで、4%は結局大きな違いとなって現れ得るわけですが・・。はたしてアイちゃんと我々には、実際どれほどの違いがあるのでしょうか?

Op.

音楽はな、演奏する時は男前で、楽器おいたら普通の兄ちゃんになるところが音楽やねん。(綾戸智恵さん弁)かっこつけるいうことがジャズではとっても大事やねん・・・。あ、特に意味はありません。

母子手帳あれこれ

9月13日 木曜日 晴れ

夜はかなり過ごしやすくなって来ました。夜診が終了する頃にはあたりは暗くなっており、確実に季節の移り変わりを実感します。

さて、日頃予防接種業務にも積極的に取り組んでいます。日本ではワクチンの暗黒時代(言い過ぎかな?)があり、公費負担のワクチン事業が積極的にすすんでいなかった側面があるのですが、昨今の啓蒙活動などにより徐々にその役割を取り戻しつつあるように思います。VPD (vaccine preventable diseases; ワクチンで予防できる疾患という意味)という概念があります。一度感染してしまうと、無視できない後遺症を発症してしまう細菌やウイルスによる感染をワクチンで予防しましょうという事です。もちろん一定確率でワクチンの副反応も起こりうるわけですが、それはワクチンによるメリットをして凌駕しうる範囲内であると考える医療者が多数になってきています。最近は同時接種や不活化ワクチンなどについての知識の豊富なお母さん達も増えており、われわれも最新の知識を学ばなければなりません。9月からはかつて生ワクチンしか存在しなかったポリオの不活化ワクチンも始まり、冬のインフルエンザの季節を控えて、ますます予防接種の役割は大事になって来ました。

ワクチンと言えば、接種の際には必ず母子手帳を持参して頂くようにしています。過去のワクチン歴や、疾病の罹患歴を確認する事も非常に大事なことです。ぱらぱらと見せて頂くわけですが、ところどころにお母さんの手書きのコメントが入っているページがあるわけですね。小さな日々の進歩や成長について、本当に暖かい、愛情にあふれたまなざしでお子さんを見守っておられる様子を感じることができます。小学校の高学年くらいの時期に、『自分の母子手帳を見てみよう。』みたいな授業があっても良いのかもしれませんね。こんなに自分の事を思っていてくれたんだなと、また別の視線で親のことを眺められるようになるかもしれないなあと思ったりします。

よさお3

近くのお家の窓に、また灯がともっています。Y病院にお世話になっていたとある患者さんが元気に退院されました。ほっとしました。関係者のみなさまどうもありがとうございました。

9月10日は…

9月10日 月曜日 雨

今日は『世界自殺予防デー』だそうです。全世界では1年間に100万人の人が自殺で死亡しているということです。仕事柄そういうことに関わる事も二度三度はあったわけではありますが、にしても多い数ですね。世界地図でみると日本はレッドゾーンに入り、決して自殺率の低い国ではないようです。WHOのサイトに”how can suicide be prevented"という記事があり、それによると

  • reducing access to the means of suicide (e.g. pesticides, medication, guns);
  • treating people with mental disorders (particularly those with depression, alcoholism, and schizophrenia);
  • following-up people who made suicide attempts;
  • responsible media reporting;
  • training primary health care workers.

という事柄が列挙されていました。自殺の手段(農薬やクスリや銃など)へのアクセスの制限、精神疾患の患者へのケアに取り組む、過去に自殺を起こした人へのフォローアップ、メディアの責任ある報道、医療者を育てる、とあります。たしかにいずれもなるほどなの項目です。中でも報道の項目に着目しました。たしかにアイドルの方の不幸な報道に一般の人の自殺報道が続く事があるのは事実でしょう。何よりも、緊急速報的に中学生や高校生が自殺をしたという即時的な情報に我々が接する価値や意義がどれほどあるのか、ということを考えると少々懐疑的になります。小さな囲み記事でよいような気がします。そしてそれなりの意識を持ってアクセスする人たちにむけては、もっと深く掘り下げた記事を用意しておけばよいのではないでしょうか?テレビ番組ではセンセーショナルな効果音付きで報道したあとの決まり文句がいつも同じです。『徹底的な原因究明と責任追及が必要です・・・』 未成年の(だけに限りませんが)自殺報道は本当に悲しい気持ちになります。そこまで追いつめられた本人の気持ちを考えるとまず悲しいですし、残された人たちの気持ちを考えるとまたさらに悲しくなります。自分にできる事は、医師という仕事柄、日常の患者さんの訴えに敏感に耳を傾けて、すこしでも精神的に参っている患者さんに対して、思いやりの気持ちをもって接してあげる事くらいです。そんなことを考えながら文章を書いていると、インターネットラジオの番組から、現職大臣の訃報が聴こえてきました。

遊歩道

”決められない○○” よく耳にしますが・・・決められることそのものに価値があるのではなくって、どんな事が決められようとしているのか、という事のほうがよほど大事だと思うのですが。悪しき事が決められるのなら、何も決められない方がよっぽどましです。即決できるリーダーシップ、っていう事にそれほどの価値があるのなら、かつてのどこかの国の社会体制を彷彿とさせます。これからは、ほどほどの時代、都会集中型ではない田舎重視の時代が来ると思っています。みなさんには一笑に付される、ここだけの話ですが・・・。

20年ぶり?の再会

9月8日 土曜日 曇り

およそ20年前にお世話になった他業種の方と、およそ20年前からずっとお世話になり続けている同業種の先輩と、ひょんなことから食事会ということになりました。お二人とも見た目も中身もかわらず、”あの頃”にタイムスリップしたような感じで楽しいひとときでした。同行のうんと若いお二人も加わって、話題は(わたしのせいで)あれこれと飛びまくりの様相を呈しておりましたが、20年を経ても気さくに話のできる異業種の方には、そうは出会うことはできないなあと帰りのタクシーで考えていました。ありがたいことです・・・。

話題

この本の話題提供をしてみました・・。いわゆるノウハウ本ではなく、含蓄のある内容で今の時代にこそマッチしている内容だなと思っています。しばらく橋本治モードです。みなさん良い週末を。

It’s harvest time!

9月7日 金曜日 くもり

こられる患者さんが口々に『稲刈りが・・・』

今年は日照時間も長く、豊作だったと聞きます。思えば米作りの農家の方はこの季節はとても大事な季節なのですね。ほどほどに雨が降ってくれないと困るけれど、天気もよくないと困るということなのでしょうか、毎日毎日気をもみながら作り上げられた丹後のお米・・・大阪等の料亭におろすんだって仰る方もおられました。みなさん日焼けしてにこやかに語って下さるのがとても印象的です。まあ、くれぐれも腰や膝はいたわってあげて下さいね。

Crop

お天気の良い日に見るとまさしく”金の稲穂”に見えるのですが・・・

 

もっと冷静に突っ込んでほしい!

9月5日水曜日 晴れ にわか雨

京都大学病院で多剤耐性緑膿菌による死亡例がでたとの報道。つい数日前には全国の病院における、医療事故につながるような危うい例(ヒヤリハット事例と呼ばれています)の集計が過去最高であったとの報道も耳にしました。いずれの報道もただ単に聞き流していると、『ふーん、そんなにひどい事があったんだ』とか『むかしはよかったのに、どんどん医療は信用ならないものになってるんだね』などといった反応を引き起こしてしまいがちな内容です。

ちがうんです。

京大だからそこまで原因の特定がなされ、情報公開されたんです。なにも動かない病院であればうやむやにされただけだったかもしれません。

医療事故を隠蔽する事無く、統計的な数字に表すことで、期せずして起こってしまうヒューマンエラーへの認識を高め、よりよい医療を達成するために行動しようという、医療者側の意識が変わって来た証なのです。

やれ医療過誤だ!病院の手落ちだ!などと煽る(つもりはないのかもしれませんが)だけのメディアには問題認識の再考を強く促したいと思います。

 

学生さんが来てくれました

9月4日 火曜日 晴れのちにわか雨

昨年の今頃は、前の勤務先でお迎えしていた医大、看護大の学生さん達です。地域医療の実地を学ぶなどという目的でもう5年くらい前に始まった制度です。昔は『現代GP』という京都府のプロジェクトだったと思います(GPはgood practiceの略)。先進的な取り組みに関する予算で地域医療を学ぶ学生さん達のプログラムの目的だったのでしょうか。好評であったようで、現在まで継続されています。夏休み最後の1週間を田舎で実習に費やして帰られるわけですね。去年はプログラムの割当等を担当させて頂き、いろんな学生さん達と交流を持つ事ができ、こちらも刺激をうけた楽しい1週間だったのを思い出します。学生さん達も最初は修学旅行気分のぬけきらない感じなのですが、地元の住民の方々との意見交換会等では目の色がかわり、真剣なまなざしで頼もしく思ったのを覚えています。彼ら彼女らにとっては短い夏の一瞬の出来事なのかもしれませんが、いつか思い出してくれることを期待しつつ、実習に協力させて頂きました。まあ開業間もない当院のような小さな所帯では教えられる事はミジンコくらいなものではありますが・・・。

オダジマ

ただいま同時並行的に取り組んでいる一冊です。ナンシー関亡きあとの、名コラムニストのひとりではないかと思っています。さて本ブログにもその成果は反映されるのでしょうか???乞うご期待。

他人の芝生

9月2日 日曜日 晴れ

ユング心理学の大家で、文化庁長官をもつとめられた心理学者の河合隼雄さんの著作は好きで比較的よく読みます。いろんな読者の悩み事に先生がお答えをされるという形式の書物などを読むと、さぞかし先生には家族関係や人間関係の悩みや問題などなく、平和な日々を送っておられたのであろうと想像する向きもあるかもしれませんが、かならずしもそうとは限らないのではないかなと思います。『はっはっは。そうであったらよろしいのですけれど。』と人なつっこい顔で大笑いされる姿が想像されます。一流証券会社の営業マンは果たして自己資産の運用を完璧にこなしているのでしょうか?医者の不養生も使い古された言葉です。自分の病気を自分で手術ができる外科医はブラックジャックくらいのものでしょう。育毛剤をカウンターに置いている薬局のおじさんのトップに秋風が吹いている事もよく目にする光景です。何事も我が事となると・・・解決に苦労する事も多いものです。

Ball girl

『カゴのほうよろしかったでしょうか』 夕方に立ち寄って買い物をしたスーパーマーケットのレジでかけられた一言です。なんとなく違和感を感じた瞬間でした。脇に置いていた空っぽのカゴを持って行ってよろしいですか?というシチュエーションだったのですが。日本語を学んでいる外国人にこの文章を説明しろと言われるととっても困るような気がします。主語と述語は? 時制は現在形?過去形? カゴの”ほう”ってどちらのほう? 近頃なんでも謙譲語、婉曲的表現が好まれるような気がします。

which direction to go

8月31日 金曜日 あめ

いよいよ8月も最後です。

政治家は政局ばっかりで・・などと批判しているテレビも新聞も、結構”政局ネタ”のおこぼれに預かってるよなーと思ったりもします。重要な事がらで、いずれを選択するべきか・・・政治家とは難しいお仕事なのでしょうね。それなりの事をしてくれればそれなりに良い待遇でしかるべきと思うのですが、それなりの仕事をしているかどうかの判断は難しいですね。難しいと言えば、我々医師も(われわれと言ってしまうと怒られるかもしれませんが)診断に迷ったりする事はしばしばあるわけでして・・例えば、よくある”水虫”ですが、皮膚科の専門医をしてでも『真菌は顕微鏡がなくては診断できません』ということらしいです。しからばとレンズを覗き込むのですが、肉眼的には非常に怪しいケースでも真菌さんがまったく見当たらない事もあるわけですね。そいういう時にどうするか? はたまた、顔面の左半分のみに集まって見えるぶつぶつ・・・ヘルペスかな?それとも何か接触性にできたものか?(この判断の難しさは、おそらく皮膚科専門医とそれ以外で大分境界線は違うのでしょうけれど)まあ、こういう局面に出くわす事があるわけですね。ついこの間まで本職でありました手術でも、あらかじめこれがこうなっていた場合にはこうしよう、というシミュレーションはとってもとっても大事な作業であります。

コブクロウ

水虫と思って水虫がいなかった時は水虫の治療はしない。ヘルペスかどうか迷ったらヘルペスの治療を行う事を考慮する。というのが前段の答えのようです。

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